けん化した油脂中の有機酸
植物組織や動物組織の成分で、水に溶けず、エーテルなどの水と混じらない有機溶媒に溶解する物質を一般に脂質といいます。最も多量に存在する脂質は中性油脂と言われるもので、動物性(牛脂・豚脂など)と植物性(オリーブ油、ヒマシ油など)があります。
これらの油脂を加水分解して、グリセロールと高級脂肪酸に分解する反応をけん化と呼んでいます。広義には、エステルが加水分解されてアルコールとカルボン酸を生成する反応です。
R-CO-O-R* → R-COO- + -O-R*
この反応には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが用いられます。その結果、生成した脂肪酸はアルカリ塩となります。また、けん化に際しては高級脂肪酸のみだけでなく、低分子量のカルボン酸も生成されます。
従来、これらのカルボン酸の分析は、液体クロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィーによりおこなわれていました。これらの手法では、強アルカリ溶液である試料がカラムの充填剤を傷めるために、前処理で中和する必要がありました。また、その中和には高濃度の塩酸や硫酸が用いられ、その無機陰イオンが夾雑ピークとして分析を困難にしていました。
キャピラリー電気泳動では、中空キャピラリーを用いて分析するので、上記のような心配は無用です。適当な泳動液を選択することによって、無機陰イオンの干渉も受けずに、低分子量のカルボン酸を簡単に分析できます。
図1 けん化した植物性油脂
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