抗体医薬品のマイクロレオロジー測定
抗体医薬品は、バイオ医薬品の一種であり低分子医薬品より分子量が大きく(分子量 ~150kDa)、血中での半減期が長く選択性が高いため、副作用も小さいことが特徴です。特にがん治療や自己免疫疾患などの治療薬として期待されています。
抗体医薬品は、経口投与を行っても消化酵素により体内で分解され、吸収性も低いため、主に注射剤として扱われます。抗体医薬品は、数100mg/ml以上の高濃度で投与されることがあり、濃度が上昇すると高粘度溶液となるため、注射が困難となります。高濃度溶液の物性評価として粘弾性評価は有効です。
今回、抗体サンプルとしてγグロブリンを生理食塩水に濃度1mg/ml~300mg/mlに溶解し、マイクロレオロジーを用いた粘弾性測定を行いました。なおプローブ粒子として、大塚電子製モニター粒子(LS3401)を遠心分離により濃縮し、サンプルに滴下・測定を行いました。サンプル量は50μL使用しました。
図1に各濃度における損失弾性率G″のプロットを示します。サンプル濃度の上昇によってG″が増加していることが分かります。この結果から得られる動的粘性率η′プロットを図2に示します。この結果から25mg/ml以下の濃度ではサンプル間の差異が確認できませんでしたが、それ以上の濃度では差が明確となりました。マイクロレオロジーを用いて抗体医薬品を測定することで高濃度の医薬品の評価はもちろん、機械式レオメータでは評価が難しい低粘度サンプルや、少量のサンプルでの評価が可能です。