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【雑話】 キャピラリー電気泳動序論

3.キャピラリー電気泳動

毛細管の利用によって、対流の発生を抑止することは、上述のように随分と昔から行われていました。しかし、それは濾紙あるいはゲルのように複雑に入り組んだ毛細管群の集合体の利用でした。真っ直ぐな円筒状の毛細管が、試料の容量が限定されるという点を除けば、優れていることは判っていたでしょう。この中空円筒を用いることには、物理学者が早くから注目していたようで、内径がミリメータのオーダーの場合には、円筒を軸の廻りに回転させて、対流の発生を防ぐという、涙ぐましい努力が一部で行われていました。内径を狭くすれば、より好ましいことは判っていましたが、そのようなものを作ることは、少なくともある時点までは、望めないことでありました。この難題は光ファイバー製造技術の進展によって解決されました。IC用のシリカ基盤の需要は、シリカの質の向上をもたらしました。また、クロマトグラフィーの進歩は内径10μmの円筒内の吸光度測定を可能にしていました。高分子合成化学は、何かと問題を引き起こしがちなシリカ表面を、必要とあれば被覆することを可能にしました。このように、キャピラリー電気泳動の進展には、他分野での進歩が非常に大きく貢献してきましたした。今後も、この状況は強化されてゆくでしょう。

キャピラリー電気泳動の最大の利点は、何といっても<自由溶液>(ゲルなどの夾雑物のない、普通の溶液のこと)の中での電気泳動測定を可能にしたことです。従来、ゲル濃度ゼロへの外挿によって自由溶液中の電気泳動移動度が求められていましたが、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感があったことは否定できません。ともかく、<自由溶液中の挙動>を知った上で、他の物質の添加など、その他の条件下の検討・活用に進むことができるということは、極めて重要なことです。キャピラリー電気泳動には、多くの選択肢が用意されています。さらに重要なことは、オンライン検出が容易であるので、小は低モル質量のイオンから、大は細胞やラテックスまで、幅広い対象に電気泳動の門戸が開かれたことでしょう。ゲル電気泳動は、生体高分子に的をしぼって、発展してきた電気泳動法でありました。その他の対象を顧みることは少なく、またそれらへの対処能力が不十分でした。

内径が狭くなると比表面積の増大のために、吸着それから電気浸透流の問題が浮上してきますが、これらの解消あるいは後者の積極的活用の道が考えられています。現在のキャピラリー電気泳動は、このような幾つかの技術上のブレークスルーによって支えられて、展開が可能となった実験技術です。

さらに付け加えるべきは、内径数10μm以下のキャピラリーからは、最初に述べたように、水溶液が抜け落ち難いことです。キャピラリー電気泳動は、この単純な事実に大きく依存しています。つまり、このことの故に、キャピラリーの先端を、ある液から他の液に、キャピラリー内部の液体の状態を攪乱することなく移動させることができるのです。これは、電気泳動の在り方に革命的な変化をもたらしました。つまり、コンピュータ制御による高度の自動化の達成でした。キャピラリー内部は詰め替えが可能な空間です。単一の管を何度も用いて電気泳動を行うことが可能です。しかし、測定の再現性は、開始時における管の内壁・内容の状況が常に更新されることによって保証されます。つまり、再現性は出発時の状況を同一にし、同一状況下で電気泳動を行う条件を設定できなければなりません。このことが、キャピラリー電気泳動の自動化を強力に求める動機となりました。そして、そこでの要請の多くが実現されてきております。

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