高分子フィルムの構造解析に有用な小角光散乱法
3.HDR機能
ハイダイナミックレンジ合成(HDR)とは、露出レベルの異なる複数枚の写真を1枚に合成する技術であり、従来のスタンダードダイナミックレンジ(SDR)に比べてより広い明るさの幅を表現できる表示技術です。近年ではスマートフォンなどのカメラにも搭載されている身近な機能です。例えば夜景や逆光の人物など明暗が極端に異なる光景の場合、明るい部分がはっきり映る設定で撮影すると暗い部分が真っ暗になり、逆に、暗い部分に合わせると明るい部分が真っ白になってしまいます。このような場合HDR機能を作動させておくと、一度に何段階かの異なる露出で同じ光景を撮影し、これを電子回路やソフトウェアで一定の計算手順に基づいて合成して、明るい所も暗い所もくっきりと映った画像に合成します。このHDR機能と小角光散乱技術を組み合わせることにより、露光時間や入射光強度を調整する事なく、急激に大きな散乱強度変化のある系の測定に対応することができます。例えば散乱強度が低い高分子フィルムの溶融状態から、散乱強度が高い結晶化状態における散乱強度変化がこのHDR機能により追跡が可能となります(図5参照)。
(a) 溶融状態 (b) 結晶化開始時 (c) 結晶化終了時
図5.HDR機能の有無によるPVDFの散乱パターン画像の比較
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