高分子フィルムの構造解析に有用な小角光散乱法
1.はじめに
小角光散乱法1)は、可視光領域の光源(360nm~830nm)を使用し、マイクロメートルオーダー(μm)の構造を解析する測定技術です。測定対象範囲は光学顕微鏡法と重なる部分もありますが、光学顕微鏡法で解像することができない微細構造に関する情報の研究をすることができます。解像することができる対象範囲において、小角光散乱法は高次構造変化をリアルタイムに数値化できることが大きな特長です。したがって、高分子フィルムの結晶構造の成長過程や相分離過程等の解析に幅広く応用することができます。
光学フィルムなどに用いられているPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、圧電性フィルムなどに用いられているPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PLLA(ポリ乳酸)は結晶性高分子と呼ばれ、球晶構造や針状結晶を持つことで知られています。また、複数のポリマーを混合することで新しい特性を持たせた材料はポリマーブレンドと呼ばれ、電子部品や自動車部品等に幅広く活用されています。この球晶構造の大きさや、ポリマーブレンドの海島構造の相関長(不規則な相構造の大きさの尺度)の大きさは、製品の強度や脆さ、耐熱性、透明性などに強く影響するため、目的に合わせて大きさをコントロールすることが重要です。小角光散乱技術では球晶や相関長を数値化するだけでなく、温度変化による球晶の成長速度、スピノーダル分解過程等における構造周期の変化を算出することができるため、製品の研究開発等、幅広く活用することが可能です。
以前より、小角光散乱装置は弊社で製造販売、また大学等で自作されてきましたが、結晶成長・相分離過程の測定では、散乱強度の急激な変化を測定するため、従来の装置では測定途中で検出器の露光時間を調整する必要があり、測定が煩雑でした。ここでは、これらの短所を解決した幅広く明暗の差を捉え、肉眼で見た時に近い鮮明な画像を得ることができるハイダイナミックレンジ機能(HDR)を搭載した当社製 「高分子構造解析システムPP-1000」(図1参照)の測定例を各種紹介します。
図1.高分子構造解析システムPP-1000
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