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光散乱法によるフミン酸-重金属複合体のゼータ電位および粒径測定

3.フミン酸と重金属イオンの複合体のゼータ電位および粒径測定

(1)測定条件
フミン酸(和光純薬工業社製)を0.1-NaOH水溶液で溶解させ、5wt%水溶液を作成しました。この溶液を蒸留水で希釈して10ppm溶液を作成し、0.1N-HClでpH5に調製しました。図2に示した各金属の中から吸着能が異なる3種類の金属イオン- Cu2+,Zn2+,Mn2+(和光純薬工業社製原子吸光用標準物質、すべて硝酸塩)-を選び、各濃度(1~100ppm)に調製しました。この溶液とフミン酸10ppm溶液を混合し、pH5に調整後、ゼータ電位および粒子径測定を行ないました。
ゼータ電位測定には、大塚電子(株)製レーザーゼータ電位計を、粒径測定には、大塚電子(株)製 ダイナミック光散乱光度計(Arレーザー仕様)を用い動的光散乱法で測定を行ないました。

図3.(フミン酸10ppm+各金属イオン)複合体のゼータ電位
図3.(フミン酸10ppm+各金属イオン)複合体のゼータ電位


(2)測定結果および考察
図3に各金属イオンの濃度を変えた溶液とフミン酸10ppm溶液を混合後、ゼータ電位測定した結果を示します。すべての金属濃度領域でゼータ電位はマイナスの値を示しますが、金属イオン濃度が濃くなるにつれてその絶対値は小さくなり、金属陽イオンと複合体を形成するため電荷がゼロに近づくことがわかります。また、各金属イオンのゼータ電位は、金属イオン濃度が10ppmぐらいまではその絶対値がMn2+>Zn2+>Cu2+の順となり、図2に示した吸着能が低い順に良く対応しています。これは、マイナスの電荷を持つフミン酸へ吸着能が高い金属ほど、その金属陽イオンの作用により電荷がゼロに近づくことが考えられます。
図4には同様にして測定した平均粒径の測定結果を、図5にはCu2+の場合の粒径分布を示します。
粒径の場合は金属イオン濃度5ppmぐらいまでは、各金属イオンで顕著な差は見られませんが、金属イオン濃度が10ppmぐらいになると平均粒径も大きく、また粒径分布もシャープな1ピーク分布からブロードな分布となり、複合体形成さらに複合体同士の凝集により粒径も大きくなることがわかります。

図4.(フミン酸10ppm+各金属イオン)複合体の平均粒径
図4.(フミン酸10ppm+各金属イオン)複合体の平均粒径
図5.粒径分布の変化(フミン酸 10ppm+Cu2+(0~20ppm))
図5.粒径分布の変化(フミン酸 10ppm+Cu2+(0~20ppm))

各金属イオンにおける粒径は、金属イオン濃度が10ppm~20ppmでは顕著にCu2+>Zn2+>Mn2+の順となり、フミン酸への吸着能が高い金属イオンほど平均粒径も大きくなることがわかります。しかし、過剰に加え過ぎると、粒径分布にも見られるように大きな凝集体を作り、沈殿することが予想されます。ところが金属イオン濃度が50ppm近くなると逆に平均粒径が小さくなります。これは、粒径があまりにも大きくなり過ぎ、沈降した後の浮遊している粒子を測定している可能性が考えられます。

ゼータ電位は、金属イオン濃度が比較的低い10ppm以下でも、各種金属イオンの間に差が見られ、反対電荷の金属イオンが吸着することによってフミン酸の表面電位の絶対値が徐々に減少しています。逆に粒径は、金属イオン濃度が低い領域では、複合体は形成しているにもかかわらず顕著な差が見られず、ある濃度から急激に大きくなる現象が見られ、複合体どうしが凝集する可能性を示唆したものと考えられます。

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