分子量測定
1.はじめに
分子量を求める手法として、GPC法(Gel Permeation Chromatography,ゲル浸透クロマトグラフィー)がよく知られているかと思います。現在ではSEC法(Size Exclusion Chromatography,サイズ排除クロマトグラフィー)としても知られています。これらの手法は、カラムに詰めた充填剤の細孔サイズによって、サンプルの溶出の時間が変わることを利用し分子量を求める手法です。標準サンプルの溶出時間と比較して、サンプルの分子量を求める方法となるため得られる分子量は“相対分子量”となります。
一方で光散乱法による分子量の測定は、SLS法(Static Light Scattering, 静的光散乱法)という手法を用います。サンプルに光を照射した際、溶質分子から発せられた散乱光は、分子量の大きさに依存した強度が得られます。また、散乱光強度は溶質濃度と依存性があるので、異なる濃度から得られた散乱光強度を解析し、分子量を求める手法となります。GPCのように標準サンプルを必要としないため、得られる値は絶対分子量となります。
測定のイメージは、濃度に対して得られた散乱光の情報をプロットします。ここでは、ポリスチレン(F40)をトルエンに溶解させたときの測定結果を示します。
詳しい計算式などは、この先のコンテンツでご紹介をさせて頂く予定ですので、今回は省略をさせていただきますが、切片の逆数が分子量、傾きが第二ビリアル係数を表す直線を得ることができます。
2つの手法に関しての長所と短所をまとめたものが表1-1となります。
表1-1. 各測定方法の長所と短所
SLSの長所は、カラムを使った測定ではないため溶媒に制限がないのが特徴です。GPC法(SEC法)ではカラムとの相互作用を起こすような試料の測定は難しいですが、SLS法の場合は、サンプル溶液をガラスセルに入れて測定を行うため、相互作用を考える必要がありません。また、絶対分子量だけではなく、溶媒との親和性を示す第2ビリアル係数や高分子鎖の広がりを示す回転半径も求めることができる手法となっています。
光散乱測定の注意点としては、散乱光強度は粒子径の6乗に比例し大きくなりますので、測定サンプル中に含まれる不純物は光学精製を行い除去する必要があります。これらのテクニックについても、次回以降にご紹介させていただく予定です。
今回から、リレー形式で光散乱技術を用いた分子量測定に関するコラムを随時更新していきたいと思っています。SLS測定の方法やノウハウ、解析に関することまで幅広く取り扱っていく予定です。みなさまの研究や、学習に少しでもお役に立てれば幸いです。
ぜひとも、次のコラムもお楽しみに。
次回:
光散乱理論 … 気体中、溶液中の散乱理論式、大きい分子からの散乱理論