ホーム > Webで学ぶ > 分子量について学ぶ > 分子量測定

分子量測定

4.SLSの測定ノウハウ … 一般的なSLS測定のノウハウ


静的光散乱法は、光(レーザー光)を測定試料に入射させ、そのサンプルから散乱した光の強度(散乱光強度)を検出器で測定します。そのため、サンプル以外の散乱光が検出器に届くと間違ったデータを得ることになり、せっかく測定したデータが使えないといったことになりかねません。今回は、そうならないためのノウハウについてご紹介します。

 

1.測定前の注意点

  • 試料を入れるセル(円筒セル)は、必ずセル表面に傷、汚れが無いことを目視で確認してから使用します。
  • 汚れたセルはきれいに洗浄します。ガラス器具用洗浄液に2時間から一昼夜浸け、その後綿棒などにレンズペーパーを巻き付け、セル内部をきれいにこすり汚れを落とします。最後に水洗いし乾燥します。
  • 測定前のセルは、0.1μmのフィルターでろ過したアセトンで洗浄することで、あらかじめ埃を取り除きます。

 

 2.サンプル調製の注意点

  • 標準物質(ベンゼン、トルエン)や試料を希釈する溶媒は、必ず光学精製(シリンジフィルターろ過や遠心処理)をおこなってゴミなど不純物を取り除いてから使用します。ゴミは1回のろ過だけでは取り除けないので、数回おこなうのが効果的です。
  • 測定するサンプルも必ず光学精製をします。その際、試料の大きさを考慮し、ポアサイズが最適なフィルターを選択します。目安は表4-1を参照ください。

表4-1. 標準資料ポリスチレン(溶媒:ベンゼン)溶液をろ過するのに用いた
シリンジフィルターの種類
標準資料ポリスチレン(溶媒:ベンゼン)溶液をろ過するのに用いた シリンジフィルターの種類

  • シリンジフィルターでろ過する場合は、ろ過した液をポタポタ落とさないで,受け側の容器の壁面にシリンジフィルターの先をつけて、ろ過液を壁面につたわらせながらろ過します。
  • 正確な分子量を得るには、測定溶液中で分子を完全に溶解させます。未溶解物やミクロゲルが存在するとフィルターろ過した際、その未溶解物やミクロゲルが捕捉される可能性があります。

 

 3.測定条件の注意点

  • 測定精度を上げるには、溶質が低濃度および散乱角が低角度での領域で測定する必要があります。ただし、低濃度では散乱光強度が弱くなり、また低角度では迷光(セルからの散乱光)やゴミの影響を受けやすいので、実験精度が悪くなることを考慮する必要があります。目安として、溶液の濃度は、散乱光強度が溶媒のそれの2倍以上となる濃度、また、光軸調整の十分行った測定装置でも散乱角は20°以上で測定するのが無難です。サンプルが水溶液系の場合は特に測定が難しいので、これよりもさらに安全を見た高濃度、高角度での測定をおこないます。
  • 試料が高分子電解質の場合、純水中では分子内・分子間の静電反発力が非常に強いので、正確な分子量測定がおこなえません。そこで、通常は低分子塩(例えばNaClなど)を0.1M程度水溶液に加えて、分子量をおこない静電反発力を遮蔽して測定します。

 

 4.測定時のトラブル

  • 分子量解析時、R(θ)の値がマイナスになる
    サンプルのフィルターろ過時に溶質がフィルターに捕捉され、サンプルの散乱光強度より溶媒のそれの方が強くなる場合に起きます。対策としては、ろ過フィルターのポアサイズを再考慮します。
  • 試料濃度を濃くしても散乱光強度が強くならない
    未溶解物やミクロゲルがある場合、サンプルのフィルターろ過時に捕捉される可能性があります。従って、ろ過フィルターのポアサイズを再考慮します。または、溶解しやすい溶媒に変えて測定することも一つの方法です。
  • 測定中の散乱光強度の変動が大きい
    溶質が溶媒によく溶解していない場合や未溶解物やミクロゲル等がある場合、散乱光の変動が大きくなります。対策としては、ろ過フィルターのポアサイズを再考慮します。または、溶解しやすい溶媒に変えて測定します。

 

次回予告:
SLSの解析方法 … 各種プロットの使い分けと、Zimmプロットを用いた分子量の解析例

ページトップへ

X LinkdIn Youtube

大塚電子公式 SNS