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分子量測定

3.SLSの測定方法 … 光学系の概念図と、測定の流れ

静的光散乱法では、ある波長の光(レーザー光)を試料に入射させ、分子から散乱した光の強さを散乱角度(測定角度)の関数として測定します。装置の光学図を図3-1に示します。測定試料を円筒型の石英セルに入れ、図中の恒温槽内にセットします。恒温槽にはセルと屈折率の近い溶液(シリコンオイルなど)が入っています。光源(レーザー光)より照射された光がセルに入射し、試料から二次的な散乱光が四方八方に照射されます。この散乱光の強度を入射光に対してθの角度(散乱角度)を向いた受光部で測定します。受光部を回転させ、θを変えることで散乱光強度の散乱角度依存性を測定します。光源は、633nmや488nmなど単色光が用いられます。また、散乱光強度の測定には、アバランシェ・フォトダイオード、光電子倍増管が用いられます。通常の測定では、入射光は垂直偏光、検出器側には偏光素子は使いません(これをVv散乱という)。検出器前には、ピンホールを配置することで、セル中心部分からの散乱光のみを検出するように設計されています。

静的光散乱法による光学図

図3-1. 静的光散乱法による光学図

 

静的光散乱法に用いるレイリー比(測定条件に依らない試料固有の量)は、測定装置で直接測定することができません。レイリー比を計算するには、レイリー比が既知の標準物質(ベンゼンやトルエン;表3-1参照)について、散乱角度90°での散乱光強度を測定(キャリブレーション測定)し、換算の係数を求めます。サンプルから得られる散乱光強度は、溶質と溶媒から散乱される光の強度の和となっています。ほしい情報は溶質からの散乱光なので、サンプルと溶媒の散乱光強度をそれぞれ測定し、サンプルの散乱光強度から溶媒のそれを引いた過剰レイリー比(ΔRθ)を求めます。それに標準物質で求めた換算の係数をかけることで絶対値を求めます。

表3-1. 標準物質のレイリー比
(25℃、Vv条件、単位:cm-1

標準物質のレイリー比

 

分子量の解析手法はいくつかありますが、異なる散乱角度、サンプル濃度からそれぞれΔRθを求めます。解析手法については後述をご覧ください。
分子量を計算するパラメータの一つに示差屈折率増分(dn/dc)(屈折率の濃度増分)があり、静的光散乱装置とは別に示差屈折計で測定します。
光散乱測定は、他の多くの分光法と比較して、無色の低分子不純物が測定結果に及ぼす影響が小さい反面、散乱光の強い、例えば埃など大きな粒子からの散乱は大きな誤差を生じる原因となります。これらを取り除くため、測定溶液を適切なポアサイズの膜でろ過したり、遠心分離によって不純物粒子を沈降させた後、清浄な上澄み部分を測定セルに移す等の光学精製が必要となります。次回は精度の良いデータを得るための測定のノウハウについてご紹介します。

表3-2. 光散乱測定の流れ

光散乱測定の流れ

 

次回:
光散乱理論 … SLSの測定ノウハウ … 一般的なSLS測定のノウハウ

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