キャピラリー電気泳動による環境水試料の無機イオン分析
2.河川水の測定
近畿地域の主要河川である木津川、宇治川、桂川、および淀川(図1)に含まれる陰イオンと陽イオンをすべて原液について分析しました。
図 1.桂川、宇治川、木津川、淀川の所在 (丸印は取水地点を示しています)
各河川水は同一日に流れの中央部分から採取しました。今回、それぞれの河川において、測定対象としたイオン種は、陰イオンではCl-、SO42-、NO2-、NO3-、F-、PO43-、陽イオンではNH4+、K+、Ca2+、Mg2+です。標準サンプルによる測定から、陰イオンと陽イオンの検出感度は0.1ppmでした。
キャピラリー電気泳動装置による各河川それぞれの水中に含まれるイオン種について、陰イオンと陽イオンのエレクトロフェログラムをそれぞれ図2と図3に示しました。
図 2.各河川水に含まれる陰イオン分析のエレクトロフェログラム
キャピラリー:内径75μm、全長80cm
泳動液 :陰イオン分析用泳動液 (大塚電子製)
印加電圧 :-20kV
検出方法 :インダイレクト検出
サンプル :採取した原液のまま使用
図 3.各河川水に含まれる陽イオン分析のエレクトロフェログラム
キャピラリー:内径75μm、全長80cm
泳動液 :陽イオン分析用泳動液 (大塚電子製)
印加電圧 :20kV
検出方法 :インダイレクト検出
サンプル :採取した原液のまま使用
イオン種 | 木津川 | 宇治川 | 桂川 | 淀川 (中流 |
Cl-(ppm) | 9.52 | 16.11 | 16.58 | 14.05 |
SO42-(ppm) | 12.19 | 17.82 | 19.13 | 17.34 |
NO3-(ppm) | 5.48 | 5.81 | 9.35 | 4.6 |
F-(ppm) | 0.10 | 0.13 | 0.10 | 0.13 |
PO43-(ppm) | 0.12 | <0.08 | 0.3 | 0.17 |
硝酸性窒素(ppm) | 1.24 | 1.31 | 2.11 | 1.04 |
表1.河川水についての陰イオン分析結果
イオン種 | 木津川 | 宇治川 | 桂川 | 淀川 (中流 |
K+(ppm) | 2.92 | 3.33 | 3.55 | 2.92 |
Ca2+(ppm) | 10.78 | 13.12 | 13.39 | 12.89 |
Na+(ppm) | 9.42 | 15.11 | 18.54 | 13.66 |
Mg2+(ppm) | 1.69 | 2.21 | 2.44 | 2.20 |
アメリカ硬度(ppm) | 53.8 | 68.0 | 72.3 | 67.2 |
表2.河川水についての陰イオン分析結果
標準サンプルの検量線から定量した各イオンの含量は表1および表2のようになりました。ほとんどのイオン種について、もっとも低い値が得られたのは大都会を流域に持たない木津川、比較的高い値が得られたのは京都の市街地を流れる桂川でした。特定の日に採取した河川水とはいうのものの、値の大小、データ間の差が有意であるかどうか疑問が残ります。しかし、結果は河川流域と矛盾せず、今度、データの蓄積によって更なる議論が可能になると考えます。
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